ヨーロッパ、東南アジア、インド・・・
   異なる文化、温かい人達との出会い

      

      

インド 3章

デリーをぶらり

朝、起きて水のシャワーを浴びる。
暑い国では、この水シャワーが気持ちいい。

髪を乾かし、屋上のレストランに向かう。
昨日、屋上に集合してデリーを散策しようと約束してたからだ。

そこには、ヨシさんがすでに座っていた。

「おはようございます!」

しばらく、話をして曽根さんを待つ。
そんな時も、話しの内容は決まって旅の話。

ブラジルに友人を訪ねて行き、長期滞在していた時に
その友人にお金を盗まれた話しなど、信じられない話もあった。

やがて、曽根さんも登場して、ホテルを出た。

まずは、メインバザールへ。
昨日の夜は閑散としていた通りが、嘘のように賑わっていた。

とにかく、そこら中インド人に埋めつくされている。
その中に、当然のように牛も歩いているし、リクシャーも
走っている。

少し歩いていると、早速インド人たちが声をかけてくる。

「ハッパ」
「オンナ」
「リクシャー」

皆が「フレンズ、フレンズ」と声をかけてくる。
どうやら、親近感をもたせるために呼んでいるようだ。

しばらくそんな現地の人を冷やかしながら歩いていると
ずーっと熱心についてくる男がいた。

彼が売りたいものにこちらが興味を示したため
脈があると感じたらしい。

とりあえず朝飯が食べたかったので、彼に案内してもらって
飯屋に行く事にした。

コンノートプレースの方まで歩き、現地の人も利用する
小奇麗な感じのレストランに入った。
値段もかなりリーズナブル。

そこで、適当にメニューを頼み、チャイを飲む。
チャイはティーバックが浮かんでいて、
日本で飲むのと変わらないミルクティーだった。
なんかイメージと違ったし、味もごく普通の薄いミルクティーだった。

食事を摂っている間、さっきのインド人が既にリクシャーで お店の前まで迎えにきていた。

どうやら、ハッパを売り込む事に熱心らしい。
とりあえず、宿を移ろうかと考えていたので
10時までに宿に帰りたかった。
時間もあとわずかで10時。
とりあえず、ホテルに向かってくれと伝えて
リクシャーに乗り込んだ。

だが彼はお構いなしに、宝石屋に行かないかと誘ってくる。
「ホテルに用があるから、まっすぐ帰ってくれ」
と頼んでも、リクシャーを止めては、
「10gでこの値段は安い」
「他では、この質は絶対に手に入らない」
「後で買うって言って、みんな戻ってこないんだ」
など、売る事以外頭に無い感じだった。
しかも、買うまで帰らないと言い出す。

俺が強めに
「いいから、まっすぐホテルに向かえ!時間が無いんだよ!」
と怒鳴ったら、彼はリクシャーを止めた。

「お前はさっきから怒ってるが、頭がおかしいのか?
お前がそういう態度をとるんだったら、こっちもキレるぞ!」
と表情を一変させた。
「インド人はみんな、シャンティー、シャンティーなんだ。
笑顔で接してるのに何でお前はキレてるんだ?
お前は俺を怒らせたいのか?」
周りに人気も無く、ここがどこかも分からなかった。

俺は謝ることにした。
でも早く帰りたいから頼むからホテルに向かってくれと伝える。

それでも、彼は怒りを抑えきれずにいた。
少しして、普通に話せる感じに落ち着いた時に
俺も理解した感じを見せて、いろいろとそこで話しをした。

「シャンティー、シャンティー」
どうやら、笑顔でハッピーにみたいな意味らしい。

確かに、彼は終始笑顔で接していた。

東南アジアでの旅で、本当にしつこい売り子が多く
イライラすることが多かった。
次第に、適当に受け流していたのが、無視するようになり
声をかけられる事にうんざりするようになっていた。
その延長線で、彼にも怒鳴りつけていた。

改めて、現地の人との接し方を考え直すいい機会になり
この後の旅にも生きることになった。

なんとか気を取り直した彼は、リクシャーを走らせてくれた。

でも、愛かわらず商売の話は止めなかった。
俺以外は、もともと欲しかったのもあったので
結局、多少値切って買う事にした。

無事にメインバザールに戻ったが、時間も10時を過ぎていたし
気疲れしてホテルの変更なんかはどうでも良くなっていた。

俺はそのままブラブラと店を冷やかしてみてみることにした。

ここには、小さい店がとにかく密集している。
生地屋、食堂、バック屋、紅茶の葉っぱ屋、アクセサリー屋、何でも屋。
今までのどこの国とも違う活気や雰囲気があった。

ブラブラしてると、曽根さんと聖子ちゃんに遭遇。
どうやら、すぐそこで会ったらしい。

「アグラーに行ったんじゃなかったの?」
と聞くと、寝坊して諦めたらしい。
なんかぼけーっとした子だったから、
寝坊したと聞いても、予想できた気がした(笑)

アグラーと言えば、タージマハルで有名な場所。
そのタージマハルが翌日は休みだった。

それで、先にバラナシに行くのだという。
俺も翌日、バラナシに向かう予定だったので
それだったら一緒に行こうとなり、チケットをとるため駅に向かった。

デリー駅は難関

デリーの駅は、メインバザールを抜けてすぐの場所にあるので
かなり近い。

駅は、利用客でごった返していた。
まずは、インターナショナルチケットオフィスという
外人向けの窓口を探す。
結構大きい駅だし、初めてで分からずに駅の構内に向かおうとすると
一人の男性が声をかけてきた。

「どこに行くんだ?」
「バラナシ行きのチケットが欲しいから、インターナショナルチケットオフィス
に行きたいんだ」
「それなら、今は休みだから諦めろ」
と言って、変な門のところに連れて行かれた。
確かにそこは、鍵がかけられ、通行できないようになっている。

続けて彼は、
「チケットは、ここをまっすぐ行った所のDTTDC(政府観光局)で買える。
ガイドブックを持ってるか?」
見せてみると、
「ここだ、載ってるだろ?」

確かに政府観光局とかで、国営の旅行会社のようだった。
彼は、自分は駅の職員だという。
ここで聖子ちゃんが
「実はさっきも同じ事言われたんだよね。
こいつがうるさいから、奥の方に進めないんだよね」
と言った。

確かに胡散臭かったので、
「オッケー分かった」
と言って、奥に進もうとすると
「おい、DTTDCに行けっていっただろ。この先は何も無い。お前は狂ってるのか?」
と言われた。
さすがに、ここまで言う奴を信用できないなと思い
「俺は狂ってるかもしれないけど、お前の身分証明を見せてくれ」
と聞くと
「なんでお前に身分証明書を見せなきゃいけない?
俺はボスにしか身分証明書はみせないんだ。やはりお前は狂ってる。」
とかなり興奮しだした。
俺も頭にきたし、話す気すら失せたので、
無視して先に進むことにした。
「おい」と掴まれた手を振り払い、先に進むと
駅構内の2階に「international ticket office」と看板がでていた。

つまり、あいつは詐欺師だったってわけだ。
連れてきて、あそこにあんのはなんだと問いただしてやりたいほど
ムカついてたが、面倒くさいからやめた。
後から知ったが、デリー駅は詐欺が多く、
多くのツーリストが、高額なツアーをくまされたりする場所で有名だった。
最初は、親切な感じもするが、従わないと高圧的な態度をとるし
仕方なく言う事を聞いてしまう人もいるだろうと感じた。

窓口で時刻表を買い、長蛇の列に並んで順番を待つ。
30分ほど待って、順番が来て記入した用紙を見せると
希望の電車が満席だった。

仕方なく、16時出発の3等車の寝台で行く事にした。(311ルピー)

無事にチケットを取ったところで、街に戻り
空き時間で散歩をした。

裏道を歩いていると、子供たちがサッカーしてたり
道端で話し込んでいるおじさんがいたりと私生活が見えて楽しい。
床屋も昔ながらといった感じで、懐かしいような不思議な気持ちになる。
試しに切ってもらえば良かったと、後から後悔した。

時間も少し迫ってきた時に宿に荷物を取りに戻った。
前日の宿代も含めて、2泊分払うつもりでいたが
駄目もとで、今日の分は泊まらないからタダにしてくれと頼んでみる。

案の定、既に夕方だしと、断られた。
「じゃ100ルピーにしてくれ」
「だめだ。特別200だ」
「なんとか、100にしてよ」
「じゃ150にしてやる」
「それならオッケーだ。今から荷物持ってくるよ」

やはり、交渉は駄目もとでもしてみるもんだと
再認識した。

しばらく、ロビーで時間をつぶす。
宿のおじいちゃんが、俺のipodを見て
「それは何だ?」
と聞いてきた。
言葉で説明するより、彼に貸してみる。
すると、こりゃすごいとばかりに上機嫌になった。
次に、横にいた若いスタッフにも貸してみると
彼も笑顔になり、「これ、俺にくれよ!」と言ってきた。
とても冗談には思えなかったので、駄目だと断ることにした(笑)

やがて、聖子ちゃんが荷物を抱えて下りてきたので
スタッフにさよならを言って、宿を後にした。

駅に向かう途中、曽根さんに会った。 朝、俺とけんかしたインド人のリクシャーに乗って
手を振っていた彼は、「これからデリーの街をリクシャーで流しにいく」
と言っていた。
運転していたインド人も笑顔で手を振っていたところをみると
お互いの満足いく取り引きができたのかなと想像してみた。

デリーにさよなら

時間にあまり余裕が無かったので、
少し急ぎ目にデリー駅に向かう。
まぁインドの電車は遅れると聞いていたので
少し安心はしていた。

駅に入ってみると、ホームがめちゃくちゃ遠い。
この時はさすがに焦って、小走りで行くが
ホームについても、どれがその車両なのかが全く分からない。
歩きながら、暗号のように車両に書かれた、英字と数字を見比べ
ようやく意味を理解した。
しかし、その車両までも大分距離があるし、出発時間は
既に過ぎていた。

かなりダッシュして、その車両まで着くと
乗車名簿に名前があるのを確認して乗り込んだ。

「助かったー」なんていいながら席に向かうと
俺の席には既に座っているやつがいた。

「そこ俺の席なんだけど、チケット見せて」
と言うと彼はどこかに行ってしまった。
・・・と、見せかけて戻ってきた(笑)
「詰めてくれ」という顔で無言でこちらを見てくる。

仕方なく詰めると、彼は当たり前のそこに座った。
この後も彼は、どこかに行っては戻ってきてを繰り返し
寝る時になったらどうするんだろうという疑問が頭に浮かんだ。
駅員がチケットのチェックに来たときにも、彼はチケットを見せずに
パスされていたので、イマイチ彼がどういう存在だったのかは分からず。
ただ、他のシートでも、3人がけのところに5人とか座っていたので
インドの鉄道では当たり前の光景らしいことだけは、理解した。

席に座って、ホッとしていると
周りのインド人が俺たちの顔を凝視してくる。

どうやら、日本人のように人を凝視なんてしたら迷惑だという
感覚がないらしい。

俺らの一挙一動を珍しそうに見ている。
向かいの青年としばらく目が合ったので
話しかけてみた。
イヤフォンで音楽を聴いていたので、聴かせてもらったが
なんだか日本の民謡のような曲だった。

しばらくしてから、彼が靴を脱いだ時、ありえない位の
異臭が辺りを包んだ。
思わず、聖子ちゃんと何度も笑ってしまった。

車内での食事も済んだところで、隣の青年がどこかに移動した。

その隙に、ベッドを作る。
この寝台列車は、3段ベッドになっていて、2段目が畳まれている。
1段目のおじさんに、ベッドを下ろしてもいいかと聞くと
笑顔で了解してくれた。
全く口をきいていなかったし、インド人は表情が暗いので
すごく優しそうな笑顔が嬉しかった。

そしてこの日は、早めに就寝した。
夜中にあまりの冷房の寒さに目を覚ました俺は
冷房のスイッチを探した。
全く見つからず、結局、折りたたみの傘で風をさえぎり
厚手の長袖Tシャツを着て眠る事にした。

特にアジアの移動手段が冷え冷えなことを
今更ながら思い出した。






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